ピッコロを上手くなるための色々なアプローチ
まずは、コンセルトヘボウのピッコロ奏者、コルトヴリントさんから言われた目から鱗のお言葉を。ピッコロは音域がフルートより一オクターブ高いせいか、まるで高音域を吹くかのように吹いてしまう人がいますが、ピッコロの低音域は”低音域”、中音域は”中音域”。中音域から高音域のように吹いてしまうと、高音域ではなす術もなくなります。口に頼って出さないように気をつけましょう。
ということで、そのことを念頭に置いて、ピッコロの上達方法を見ていきましょう!
ピッコロの音色と腹筋の使い方
ピッコロはフルートよりもずっとお腹の支えが必要になります。腹筋を使った高音の練習など、高音域の練習を参考に腹筋を使った音練習をしてみて下さい。
腹筋練習の話は何度かしてきましたが腹筋の練習というと、ついついお腹を完全に凹ませ、激しく動かしてしまいます。
ですが、実際にはお腹の中の空気を空にしてはいけないのです。図の緑の状態が通常として、軽く吸った状態がピンク、ガッツリ吸った状態が青。腹筋の練習は、青(満タン)とピンク(軽く吸った状態)の間を行ったり来たりする感じ・・・とは、以前の記事にも書きました。
次に、ピッコロはフルートよりも使用する息の量はずっと少ないです。ピッコロは管体がとても小さいので大量の息を勢い良く入れすぎると、『振り切れたバロメーター』『許容範囲オーバーの大ボリュームにされたスピーカー』のような音になってしまうのです。音程も必然的に高くなってしまいます。
ではただただ大人しく吹けば良いのか?
ピッコロを吹いた事のある方なら分かると思いますが、それでは音が出ません。”息の圧力”が減るとヒョロイ音になってしまう、高音域は出せない。息の圧力はフルート同等、それ以上に必要です。
私のイメージでは、少量のでもコンパクトにまとまった中身のある息を送る感じです。フルートと”同等の圧力”を与えるためには、フルートと同等の量の原料が体内に必要になる(=同等の量の息を吸う)のですが、一方で息がドバドバと出て行かない為に自身で抵抗を作るので、結果”お腹の支え”がフルートよりもっと必要と感じます。
お腹からしっかり吹いて
などと言われると、ついつい”お腹をハァッ!!と凹ませた勢いで”としがちですが、実はほぼ真逆です。お腹からしっかり、というのは、逆にお腹でしっかり支える感じ。図の、赤い矢印の力が働いている感じです。腹筋練は、ハッ!っという外からの力に対し、中からの相撲取りが”より出し”しようとする力もあるわけです。
何故いきなりお相撲さんを例に出したかというと、その全ての”力作業”がしなやかに行われなくてはならないからです。肩やら、膝やらがガチガチに固くなってしまっては、元も子もないのです。お相撲さんの寄り相撲が如く、シナヤカに、重心低く。。。
この感覚をマスターするのに、とってもおすすめなのが吹上パイプです。これは本当におもちゃなのに、役に立ちます。ピッコロ吹きの皆さん、是非試してみて下さい。今までとピッコロの音色が変わるかも?
口笛で吹き口を鍛える。吹き口(唇)をセンシティブに
表題にある通りですが、その唇のしなやかさ、吹き口を整える(唇の穴の空いてる部分)という良い練習方法で、「口笛」があります。ピッコロを吹く人にも大変おすすめです。ピッコロはフルートより歌口(フルートの頭部管の穴)が小さいので、自分の唇の穴もよりセンシティブな方が良いのです(フルートの3オクターブ目を吹くようなアンブシュアで吹いてはいけないのです!)
ピッコロは特に騒音公害が・・・。中々お家で練習するのも憚れます。楽器を練習出来る時間は限られていますが、口笛なら夜でも騒音って言われないので(口笛をよる吹くと蛇が出ると言われますが)、空いてる時間に練習できます。
吹き口を整える練習に口笛を使おうと思ったら、ヒョットコにしないで吹くのが重要です。 (フルートを吹く形よりは、もちろんヒョットコ唇になります)ヒョットコやほっぺ膨らむ口笛奏法だと、綺麗な音も出ないです。
唇全体の形はそんなに変わりません。 ビデオのこの方止まりくらいかな。
吹き口はとってもセンシティブ。その感覚をより一層磨くことで、色んなテクニックが可能になってきます。私は特に、ppの低音(大きな音が出ないからppではなくて…)、ppの高音がずっと出しやすくなる気がします。現代テクニックのホイッスルトーンもやりやすくなります。
とりあえずは、低音から高音までの音域をまず広げる練習。
唇の穴は空いてるのか空いてないのか…くらいな感じです。唇を閉じた状態からプーッと言うくらいの穴の大きさ。フルートと同じで高音は小さめの穴、低音は大きめの穴になりますが、実際の見た目の差は極僅かです。 感覚では結構変わるかもしれません。
低音域もあまり吹き口が大きくなりすぎると音にならなくなってしまいます。 外は広くしないで口の中を広く保つ。不思議なことに、これもお腹からの支えがあると低音も出やすいです。
何かに感心・感銘して
「 おーー」
っていう時ありますよね。その「おー」はかなり低い声で、胸骨辺りに反響しています。
フルートもピッコロも低音を吹く時もその感覚です。楽器の管体だけではなく、自分の体内共鳴も使うわけです。ピッコロの方が楽器が小さい分、さらに”自分が楽器”になる率が上がると思っても良いでしょう。楽器が小さい分なのか、唇のちょっとした変化も音に反応しやすいので、とにかく唇を敏感にすることで、音色・コントロール共に抜群によくなります。
高音域はフルートのように口を横に引っ張ってしまっては音が出なくなります。頼るべきは口の横引っ張りではなくて、吹き口のセンシティブさなのです。慣れると、実は難しいって思われる(実際難しい)フルートの高音域ppも、まるで口笛でも吹いてるかのような感覚です。もちろん息の支えとのコンビネーションによって可能なのですが。
口笛なら、蛇が出るぞ・・・と言われない限り、夜でも練習出来ますし、さりげなく色んなところで練習が出来るので是非試してみてください。
ハーモニクスの練習
現代奏法の項目で書いてありますので、そちらを参照にしてください→現代奏法 ハーモニクス
ハーモニクスは、倍音という意味で、中音域の音は全て低音域の倍音で出しています。したがって、全く知らない技法ではありませんので、気軽に練習できます。
一番簡単な練習方法は、トレバー・ワイ フルート教本 1 音づくり(参照ページ)にも載っています。低音域のドの指使いで、中音のド、ソ、高音のド、ミ、ソまで出るという練習です。この他にも、簡単なミニエクセサイズがついています。ミニエクセサイズの方になると、少し難易度が上がります。ピッコロは、最低音ドがないので、レでやってみて下さい。ピッコロの方が難易度が高いなと感じますが、その分、とても効果があります。
ピッコロを上手くなるコツは「フルートの高音域のように吹かない」「お腹の支えはより必要」「唇をよりセンシティブに」「自分自身が楽器になったつもり」と意識してみましょう。